なぜ「ネットワーク分離」が必要なのか

本コラムは、経済産業省・IPAが策定した「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」について、
その要求事項を中国古典『孫子の兵法』の視点から読み解くシリーズです。

前回は「プラットフォームセキュリティ」を取り上げ、戦う前に負けない土台を整備することの重要性を整理しました。


第11回:なぜ「プラットフォームセキュリティ」が必要なのか

大分類:攻撃等の防御 / 中分類:技術インフラのレジリエンス(4-5)

ネットワーク分離とは何か(SCS評価制度の要求)

SCS評価制度では、ネットワークを適切に分離し、境界部分を防護することが求められています。

これは、

  • 通信経路を制御し
  • アクセス範囲を限定し
  • 領域ごとに管理する


という構造を設計することを意味します。

なぜネットワーク分離が必要か(孫子における考え方)

ここで問われているのは、防御の最終段階です。

これまでの対策によって、

  • 侵入を防ぎ
  • 人の行動を揃え
  • 被害を無効化し
  • 土台を安定させてきました


それでもなお、侵入の可能性をゼロにすることはできません。

このとき勝敗を分けるのは、


被害がどこまで広がるかです。

孫子はこう述べています。

地形者,兵之助也

―『孫子兵法・地形篇』


戦う場所の制御そのものが、戦いを有利にする要素となります。

ネットワークは戦場である

現代において、ネットワークはすべてを接続する基盤です。

  • 端末とサーバがつながり
  • 部門間で通信が行われ
  • 外部とも連携しています


戦場が一体化している状態です。

分離されていない場合のリスク

ネットワークが分離されていない場合、

  • 一箇所の侵入が
  • そのまま内部に広がり
  • 重要領域へ到達する


局所的な侵害が全体障害へと発展します。

これは、


戦場が区切られていないために、全体戦へ拡大してしまう状態です。

ネットワーク分離の本質

ネットワーク分離は、

  • 領域を分ける
  • 経路を制御する
  • 進路を限定する

という設計です。


攻撃の広がりを抑え、戦いを局所化する役割を持ちます。

注意点・整理

境界は内部にも存在する

境界は外部との境界だけではありません。

  • 社内と社外
  • 部門間
  • 重要度の異なる領域


内部にも明確な区切りを設ける必要があります。

4-4との違い

  • 4-4(基盤):崩れない状態を作る
  • 4-5(レジリエンス):崩れても広がらないようにする

SCS評価制度が求める本質


全体崩壊を防ぐための構造設計です。

  • 戦場を分離する
  • 進路を制御する
  • 影響範囲を限定する

まとめ

ネットワーク分離とは、

  • 技術的な設定ではなく
  • 被害を制御する戦略です


戦場を制御できる範囲に収めて初めて、防御は成立します。


真に強い防御とはすべてを守ることではない。
崩れても、広がらないことである。

チェック:ネットワーク分離は機能しているか

  • ☑ ネットワークが領域ごとに分離されているか
  • ☑ 重要領域へのアクセスが制御されているか
  • ☑ 横展開を防ぐ構造になっているか
  • ☑ 境界が意図的に設計されているか
  • ☑ 被害が局所化される仕組みになっているか

これらに一つでも☑を付けられない場合、
侵入後に被害が拡大する可能性があります。


第13回:なぜ「継続的監視」が必要なのか(近日公開)

参考