なぜ「データセキュリティ」が必要なのか

本コラムは、経済産業省・IPAが策定した「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」について、
その要求事項を中国古典『孫子の兵法』の視点から読み解くシリーズです。

前回は「教育・訓練」を取り上げ、人の行動を揃えることが防御の前提となることを整理しました。


第9回:なぜ「教育・訓練」が必要なのか

大分類:攻撃等の防御 / 中分類:データセキュリティ(4-3)

データセキュリティとは何か(SCS評価制度の要求)

SCS評価制度では、データに対して以下の管理が求められています。

  • データの暗号化
  • 適切な場所への保管
  • 外部との共有に関するルール整備
  • バックアップの取得


これらは単なる防御強化ではなく、侵入された後の被害を制御するための仕組みです。

なぜデータセキュリティが必要か(孫子における考え方)

ここで重要になるのは、防御の前提の変化です。


侵入は起こり得るものとして考える必要があります。

孫子においても、戦いは単に守ることではなく、

勝兵先勝而後求戰

―『孫子兵法・形篇』

すでに負けない状態を作ってから戦うことが重要とされています。


侵入されても被害が成立しない状態を作ることが、この段階の目的です。

暗号化の意味

データの暗号化は、単なる技術的対策ではありません。

その本質は、

  • 奪われても内容が理解できないこと
  • 情報として利用できないこと


情報の価値そのものを無効化する行為です。

兵法的に見れば、これは


敵に奪わせても意味のない状態を作ることに相当します。

データ保管の意味

データをどこに置くかは、単なる運用ではありません。

  • 安全な場所に集約する
  • 防御の枠内に置く


どこに置くかによって、防御の強さが決まります。

個人端末や外部環境に分散したデータは、


防御の外側に置かれた状態となります。

情報共有の意味

情報は利用するために移動します。

そのため、共有時が最もリスクの高い局面となります。

  • 送信先の確認
  • 送信履歴の管理


流通を制御することで、情報の漏えいを防ぐことができます。

これは兵法的には、


補給路を統制することに相当します。

バックアップの意味

バックアップは、防御ではなく復元のための仕組みです。

  • データを戻せるか
  • 業務を再開できるか


被害が発生した後に立て直す力を確保するものです。

孫子の思想においても、


戦いは継続できるかどうかで決まります。

注意点・整理

完全防御は存在しない

これまでの対策は侵入を防ぐものでしたが、


技術的にも運用的にも、完全に防ぐことはできません。

発想の転換が必要

ここで重要なのは、


侵入された後の状態を設計することです。

SCS評価制度が求める本質

この領域の本質は、


被害を成立させない構造を作ることです。

  • 奪われても読めない
  • 消されても戻せる
  • 流出しても追跡できる

まとめ

データセキュリティとは、

  • 単なる防御の延長ではなく
  • 被害そのものを制御する仕組みです


侵入されても崩れない状態を作ることが、最終的な防御となります。


セキュリティの本質は守ることではない。
失っても崩れない構造を作ることである。

チェック:データセキュリティは機能しているか

  • ☑ 重要データが暗号化されているか
  • ☑ データの保管場所が管理されているか
  • ☑ 情報共有のルールが定義されているか
  • ☑ 送信履歴を追跡できるか
  • ☑ バックアップから復元可能か

もしこれらに一つでも☑を付けられない場合、
侵入後の被害拡大を防げない可能性があります。

まずは、データがどのように扱われ、どこにあるのかを整理することが必要です。


第11回:なぜ「プラットフォームセキュリティ」が必要なのか(近日公開)

参考