なぜ「アイデンティティ管理・認証・アクセス制御」が必要なのか
本コラムは、経済産業省・IPAが策定した「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」について、
その要求事項を中国古典『孫子の兵法』の視点から読み解くシリーズです。
前回は「リスクアセスメント」を取り上げ、脆弱性や脅威情報を収集・判断・管理するプロセスの重要性を整理しました。
大分類:攻撃等の防御 / 中分類:アイデンティティ管理、認証、アクセス制御(4-1)
アイデンティティ管理・認証・アクセス制御とは何か(SCS評価制度の要求)
SCS評価制度では、以下のような管理が求められています。
ユーザID・管理者IDの管理、認証の強度設定、アクセス権の付与・変更・削除、
およびその運用管理を行うこと。
この要求は、
- 誰が利用するのか
- どのように認証するのか
- どこまでアクセスできるのか
を管理する仕組みを整備することを意味します。
なぜアクセス制御が必要か(孫子における考え方)
この考え方は、孫子においても示されています。
用兵之法,全国为上,破国次之
―『孫子兵法・謀攻篇』
守るべき対象を破壊させないことが最も重要とされているように、
アクセス制御は防御の前提となります。
戦いにおいて「侵入させない」ための条件を整える行為が、アクセス制御です。
IDの管理
評価基準では、ユーザIDの発行・変更・削除を管理することが求められています。
これは単なるアカウント管理ではなく、
誰が戦場に入ることを許されているのかを決める行為です。
- 誰が正規の利用者なのか
- 不要な存在が残っていないか
正体が不明確なままでは、防御の線引きはできません。
管理者IDの統制
管理者権限については、付与対象を限定し、権限を最小限に抑えることが求められています。
これは、孫子における「兵の運用」に関わる重要な考え方です。
- 強い力を持つ者を限定する
- 権限の集中を防ぐ
強大な力は便利であると同時に、制御できなければリスクとなります。
認証の強度
認証については、利用者を確実に識別することが求められています。
これは「味方と敵を区別する」ための仕組みです。
- 本人であることを確認する
- なりすましを防ぐ
識別が曖昧であれば、防御は意味を持ちません。
アクセス権の管理
アクセス権については、必要な範囲に限定し、継続的に見直すことが求められています。
これは戦力配置の考え方に通じます。
- 必要な場所にだけ権限を与える
- 不要な権限を持ち続けない
過剰な権限は、防御の隙を生みます。
まとめ
アイデンティティ管理・認証・アクセス制御とは、
- 設定や技術の問題ではなく
- 防御の前提条件を整える行為です
誰が入り、どこまで動けるかを制御することで、初めて防御は成立します。
侵入を許さない条件を整えて初めて、戦いは守られる。
チェック:アクセス制御は機能しているか
以下はチェックシートです。
すべてに☑が付く状態が望ましい状態です。
- ☑ 利用者が明確に識別できているか
- ☑ 不要なIDが残っていないか
- ☑ 強い権限が適切に制御されているか
- ☑ 認証が十分に強固になっているか
- ☑ 必要以上の権限が与えられていないか
- ☑ 権限の見直しが行われているか
もしこれらに一つでも☑を付けられない場合、
防御の前提が崩れている可能性があります。
まずは、誰がどこまで操作できるのかを整理することが必要です。
