なぜ「アイデンティティ管理・認証・アクセス制御」が必要なのか

本コラムは、経済産業省・IPAが策定した「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」について、
その要求事項を中国古典『孫子の兵法』の視点から読み解くシリーズです。

前回は「リスクアセスメント」を取り上げ、脆弱性や脅威情報を収集・判断・管理するプロセスの重要性を整理しました。


第7回:なぜ「リスクアセスメント」が必要なのか

大分類:攻撃等の防御 / 中分類:アイデンティティ管理、認証、アクセス制御(4-1)

アイデンティティ管理・認証・アクセス制御とは何か(SCS評価制度の要求)

SCS評価制度では、以下のような管理が求められています。

ユーザID・管理者IDの管理、認証の強度設定、アクセス権の付与・変更・削除、
およびその運用管理を行うこと。

この要求は、

  • 誰が利用するのか
  • どのように認証するのか
  • どこまでアクセスできるのか

を管理する仕組みを整備することを意味します。

なぜアクセス制御が必要か(孫子における考え方)

この考え方は、孫子においても示されています。

用兵之法,全国为上,破国次之

―『孫子兵法・謀攻篇』

守るべき対象を破壊させないことが最も重要とされているように、
アクセス制御は防御の前提となります。

戦いにおいて「侵入させない」ための条件を整える行為が、アクセス制御です。

IDの管理

評価基準では、ユーザIDの発行・変更・削除を管理することが求められています。

これは単なるアカウント管理ではなく、
誰が戦場に入ることを許されているのかを決める行為です。

  • 誰が正規の利用者なのか
  • 不要な存在が残っていないか

正体が不明確なままでは、防御の線引きはできません。

管理者IDの統制

管理者権限については、付与対象を限定し、権限を最小限に抑えることが求められています。

これは、孫子における「兵の運用」に関わる重要な考え方です。

  • 強い力を持つ者を限定する
  • 権限の集中を防ぐ

強大な力は便利であると同時に、制御できなければリスクとなります。

認証の強度

認証については、利用者を確実に識別することが求められています。

これは「味方と敵を区別する」ための仕組みです。

  • 本人であることを確認する
  • なりすましを防ぐ

識別が曖昧であれば、防御は意味を持ちません。

アクセス権の管理

アクセス権については、必要な範囲に限定し、継続的に見直すことが求められています。

これは戦力配置の考え方に通じます。

  • 必要な場所にだけ権限を与える
  • 不要な権限を持ち続けない

過剰な権限は、防御の隙を生みます。

まとめ

アイデンティティ管理・認証・アクセス制御とは、

  • 設定や技術の問題ではなく
  • 防御の前提条件を整える行為です

誰が入り、どこまで動けるかを制御することで、初めて防御は成立します。


侵入を許さない条件を整えて初めて、戦いは守られる。

チェック:アクセス制御は機能しているか

以下はチェックシートです。
すべてに☑が付く状態が望ましい状態です。

  • ☑ 利用者が明確に識別できているか
  • ☑ 不要なIDが残っていないか
  • ☑ 強い権限が適切に制御されているか
  • ☑ 認証が十分に強固になっているか
  • ☑ 必要以上の権限が与えられていないか
  • ☑ 権限の見直しが行われているか

もしこれらに一つでも☑を付けられない場合、
防御の前提が崩れている可能性があります。

まずは、誰がどこまで操作できるのかを整理することが必要です。

参考